「BOP」という言葉をご存知でしょうか。
「Base of the Pyramid」の略で、世界の所得別人口構成の中で、最も収入が低い所得層を指す言葉。
約40億人がここに該当すると言われています。
このBOPに注目し、「モバイルテクノロジーを使って世界の貧困問題を解決できるビジネスをつくる」という志でシンガポールにて会社を設立、そしてフィリピンで日々猛進しているのが、深田さんと尾崎さん率いるYOYO HOLDINGS PTE. LTD.。
前のエントリでは、YOYO起業までの2人の軌跡をご紹介。※軌跡編はこちら。
そして今回は、Candyのリリース、そして新しいメンバーを迎えたYOYOの「今」と「これから」についてお話いただきました。
※時間の都合で尾崎さんは途中退席のため、主に深田さんのお話です。
「Candy」ベータ版のリリース、そして会員登録の一時停止。そこで得たものは。
深田:
ポールさんに入ってもらったことで、YOYOとしていっきにドライブかかったと思っています。
それに役割分担として、僕たち3人の中で「お金のことをちゃんと考えられる人」がいることはバランスが取れていると気づきました。起業家・ビジネスという点でも、それまで不安だったものが具体的にイメージ湧くようになりました。本当にありがたいと思っています。
あとはサービスをリリースだ、とうことでリスクを1つずつつぶし、市場調査してフィードバックをもらったり、その間に尾崎が11月に生活拠点をマニラに移したりもしました。
尾崎:
その後もしばらくサービス公開の準備を続け、3月にCandyのベータ版を公開しました。
と言っても、とても単純なものです。「会員登録機能のみ」「登録したら10ペソ(日本円で約24円)もらえる」だけ。最初の一週間は、特にプロモーションはしませんでした。会員数も、一日に100人程度。
それが、ある日を境に会員登録数が急に増えたんです。調べたところ、どうやら口コミがものすごく広がっていたみたいで。リアルでもネットでも。
実は、3月末での(会員数の)コミットラインは4桁台だったんです。それが5桁に行くとは、まったくの想定外でした。
深田:
この時の学びは大きかったです。
ロードをあげる(※1)ことでユーザーの皆さんには喜んでいただけますが、つまりこれって、お金は減る一方じゃないですか(笑
これはどうしたものかと。
僕は、「続けたい」。
尾崎は、「止めた方がいいかも」。
ポールさんからは、「今すぐ止めろ」。
結局、会員登録は一旦止めることになりました(※2)。
想定外のことではありましたが、おかげで僕たちは、「ユーザーがいる」「ユーザーが集まる」という答え、確かな手応えを得ることができました。
あとは、「誰が出稿するか」。
現在では、フィリピンで事業展開をしている大手食品メーカーや大手化粧品メーカー、IT企業をはじめ、研究機関などにもご利用いただいています。フィリピンの消費者に対して直接アプローチできることはクライアント様からも支持されることがわかりましたので、今後はさらに成長していける姿を目指し、様々な取り組みを行なっていきたいと考えています。
※1 「ロードをあげる」とは
フィリピンでは、国民の大半がプリペイド携帯を利用していて、このプリペイド携帯に料金をチャージすることを「ロード」と言う。また、「残高」「利用料金」のことも「ロード」と言ったりする。
※2 Candyはその後、7/24に正式リリースしている。
http://can-dy.ph
メトロマニラのマカティにオフィスを構え、新しいメンバーを迎える
シンガポールで起業した2人。その後、タイミングよくクロスコープマニラがオープンし、内覧した日に入居を決め、5月にはフィリピンでYOYOの子会社も設立している。写真は深田さんのブログより。
深田:
元々は尾崎と2人でやるつもりだったんで、加藤さんのJoinも僕たちには想定外だったのですが、気づいたら今(2013年10月)の時点であと4人、メンバーが増えました。
まずは榊原。
「フィリピンで最もIT業界に詳しいと言われている男」だと聞いていて何度か顔を合わせたことがあるんですが、たまたま「榊原さんがYOYOに興味を持っている」なんて噂を耳にしたんですよね。でも最初は、「どうせ営業マンだし、セールストークでしょ」って思ったんです(笑
だから飲みに誘ってみたんですよ。そしたら、本気ということがわかりまして。
ウチはベンチャーだし、途上国でもお抱え運転手とかいないし、待遇とか前と比べるとよくないだろうし、、などという話をしましたが、
「はい。給料とかいらないです。会社の売上や自分の稼ぎくらい自分で作りますんで」
と言われて。びっくりしました。
もちろん、YOYOは本気で世界をよくするための事業を作っていて、世界の貧困問題を解決していきたいことへのコミットメントも確認しました。
そしてこの夏から一緒に働いています。
次はグプタ。本人は流暢な日本語で「『ぐっさん』って呼んで」って言います。
インド生まれ、東京育ち、アメリカの大学を出ています。
ぐっさんとは、2012年5月に開催されたStartup Weekend Tokyoで同じチームで、そのときも「BOP✕モバイル」という切り口で事業モデルを一緒に考えた仲間でした。その後、KUROHUNEというイベントで再会したのですが、お互い「最近何してる?」から近況報告が始まって頻繁にやりとりするようになり、いつのまにか彼を必死に口説いていました(笑
実は数日前にフィリピンに来たばかりです。こちらの事情がまだわかっていないので、Suniさんの家計簿(※3)、けっこう参考にしているみたいですよ。
エンジニアは2名増えました。
ザッカミーとカールソン。
ザッカミーは、Linkedinで見つけました。カールソンはFacebook。
2人を採用して気づいたんですけど、フィリピンにもスタートアップで働くポテンシャルがある人、能力高い人はもちろんいて、そういう人って国籍や環境問わず自ら積極的に情報発信できるんですよね。フィリピンで、求人サイトの情報を待ってそこに応募するような人じゃスタートアップではやっていけないと思う。だから、彼らに知り合えたのはとてもラッキーでもあるし、運命だと思っています。
※3 Suniさん(私)の家計簿
〜Zaimで毎日付けている家計簿を、月1でブログに公開している。
このエントリをキッカケにZaimを使い始めた人が多く、今、フィリピンの日本人スタートアップ界隈で一番ホットなアプリは、もしかしたらZaimかもしれない。
http://sunikang.blogspot.com/2013/10/zaim9.html
そしてYOYOの「これから」
左からザッカミーさん、カールソンさん、尾崎さん、深田さん、グプタさん、榊原さん。
深田:
Candyは、まだまだこれからです。ベータ版の公開、そして正式版を公開した中で、「ユーザーがいる」という明確な答えは得られましたが、ビジネスとしてどういう方面を目指すべきかについては試行錯誤を繰り返しています。
私たち以外にも、非常に勢いのある競合企業が米国やシンガポールに存在しています。
彼らの存在は脅威でもあり、もちろんいずれは僕たちが勝つつもりでやっていきますけど、現時点で彼らの存在は、「僕たちの考えは間違っていない」ということの一つの証だとも捉えています。
10月10日で、YOYOは創業から丸一周年を迎えました。
(私の、「今思えばDeNA在籍中に、新規事業コンテストで優勝して事業化されたりしなくてよかったですね」という投げかけに対し)もちろん、あの時にもし事業化されていたら、僕たちは今ここにはいません。でも、「よかった」と言える段階ではありません。まだ何も実績を残していませんから。
売上も利益も事業モデルも資金計画も、1年前の計画とはだいぶ異なりますけど、僕たちの「モバイルテクノロジーを使って世界の貧困問題を解決できるビジネスをつくる」というのは変わりません。
心強い仲間も増え、YOYO2年目ということで、攻めて攻めて結果に繋げていきます!
あとがき
笑顔で語る2人の裏には、想像もできないような様々な苦労があったかもしれませんが、「モバイルテクノロジーを使って世界の貧困問題を解決できるビジネスをつくる」という変わらぬ強い意志があるからこそ、海外での起業や仲間の採用、サービスリリースを経て「今」にまで至ることができたはず。「やりぬくための、変わらぬ強い意志を持ち続けること」、そして「一緒にコミットできる優秀な仲間」の大切さを強く感じることができた時間でした。
ちなみに私は前職の広報時代、「取材される側の対応」にはそれなりに慣れていましたが、今回は私個人のブログで、これまでの「行ってきた」の枠を越えた「人物にフォーカスした取材」は初めてでした。そんな不慣れな私にも関わらず、お二人からグイグイといろいろなお話を聞けて、本当にありがたく思っています。
「モバイルテクノロジーを使って世界の貧困問題を解決できるビジネスをつくる」、これからのYOYOにますます期待大!です。
深田さん、尾崎さん、そしてYOYOの皆さん、応援しています。そして仕事中にも関わらず、本当にありがとうございました!
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