「戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争」を読み終えたので、感じたことの備忘録を兼ねてちょいと書きたいと思います。
この本の話の前に、私が高校受験のときに経験した、ものすごく困った話を。
在日コリアンとして生まれ育った私は、親の意向で当たり前のように朝鮮学校に通い、そこで「北朝鮮に都合の良い歴史」を学びました。
朝鮮戦争を仕掛けたのは?
当たり前じゃないですか、韓国とアメリカですよ。
※学校では、朝鮮戦争ではなく「祖国解放戦争」という名前で習いました。
高校2年生になり、「日本の大学に進学」という未来を描き始め、その準備として日本の塾に通い始めます。
受験科目として勉強することにした科目は、英語・現国、そして世界史。
英語も現国も世界史も、偏差値そこそこ取れるでしょ、文系クラス300人中常に上位5位の成績だしー、と、世間知らずだった私はタカをくくっていました。
が、
塾で勉強をし始めるうちに、特に世界史でおおきな壁にぶち当たることになります。
なぜなら、
塾で習う世界史と、朝鮮学校で習った世界史が違うから
どういうことかと言うと、極端な例ですが、
朝鮮戦争について、
朝鮮学校では「仕掛けたのは韓国とアメリカ」と習い、
塾の世界史の授業では「仕掛けたのは北朝鮮」と習うんです。
脳みそがパンクしそうでした。
(他にも、同一の固有名詞に対して、日本語と朝鮮語だといい方が微妙に違うとか)
当時は「なんで習ったのと違うことを覚えなきゃいけないの」とものすごくこまったのですが、あれからだいぶたって気づいたのは、
「おそらく、どっちにとっても、それが事実」
「でも世界的には、北朝鮮が仕掛けたことになっている」
「第三者(世界)を信じ込ませた方が勝ち」
ということなんですね。
※当時の韓国・アメリカが戦略的にPRした、という訳ではないでしょうが。まーどっちかっつーと力関係かな。
※もしこの先世界がひっくり返って北朝鮮がアメリカみたいなポジションになったら、世界史もあれこれひっくり返るんだろうと思ってる
※塾の世界史の先生に「習ってたことと違う」と泣きついたら、「自国に都合のいいことを後世に伝えるものだから、どっちの側面から学ぶのはとてもいいことなんだけど、日本の大学受験のためには日本の視点での世界史をやらないと偏差値とれない」と言われて、当時は「私が学校で学んだのってなに」と心底がっかりしました。今となってはこのアドバイスがとても貴重なことだと理解できるんですけどね。もう名前も忘れちゃったんだけど、河合塾で世界史を教えていた先生です。ありがとうございました。
そこでこの本、「戦争広告代理店」の話に戻るんですけれども、
戦争広告代理店を読んで…
この本に主に書かれている「ボスニア vs セルビア」について、
セルビアがもしボスニアに先んじてPR戦に予算をめっちゃ投入していたら、おそらく歴史は変わってたんでしょうね。
それくらい、「PR戦略は大事」ってこと。
どのようなPR戦略に基づいてボスニア(シライジッチ外務大臣)が動いていたのかが、どのようにセルビア側が敗北していったのかがよくわかる本でした。
セルビアだけが一方的な悪者みたいな書かれ方になっているんですが、まぁ実際にかなり悪いことをしているんですけれども(セルビアの大統領だったミロシェビッチ氏は、戦争犯罪人として身柄を拘束されたし)(収監先で獄死するんですが)、それはセルビアだけなく他の民族も似たようなことをやってる、という見方もあったりするんですね。
ここでは事実検証はしませんけれども、事実がどうであれ、「セルビアが悪」という印象がついてしまった以上、情報戦は完敗だし、それが他の国からの援助・経済制裁etcに影響していくんだということを目の当たりにしました。
最後の最後、シライジッチ外務大臣のルーダー・フィン社に対する支払いに関する態度が「えーその仕打ちないでしょー」って感じで、なんかちょっと、後味が悪いです。
日産のカルロス・ゴーンだって
最近だと日産のカルロス・ゴーンがいろいろやらかしちゃったというニュースを見ますが、これって、事実はどうであれ、「会社の経費で●●を買った」とか「家族旅行を日産の経費で」とか「報酬はおいくら億円」なんて報道されると、日本人からしたら「なんなのアイツ」「巨額な報酬をもらってるくせに」って思っちゃうじゃないですか。
でも、ですよ。
もしかしたら。
会社の経費で何か買うのも旅行に行くのも、契約の一部として明記されているのかもしれないし(福利厚生みたいな)(駐在員の一時帰国の飛行機代を会社が支給するようなイメージ)、報酬だって海外の他の自動車会社と比べたら小さいかもしれないし、そもそもカルロス・ゴーンが本当に悪い事してたんだったらそれをこれまで隠していた日産自体どうなのよって話だと思うんです。
だから、「印象操作」ってよくも悪くも大事ですよね。
芸能人の不倫報道だって、事務所側がどう対応するかによって何事もなく忘れ去られるか炎上するか、違ってくるはず。
国も政治もPRが大事、でも日本は…
20年近く前に書かれた本なんだけど、最後のところ、「日本の国際的地位が下がる一方」ってホントその通りになってる気がする... pic.twitter.com/DlieAsSNQw— Suni@マレーシアでワーママ (@suni) November 23, 2018
感想としてはここのツイートの通りなんですが、この本って2002年に発刊された本で、その時点でこう書かれてるんですね。
あの頃と比べると、というかもっと前か、なんか日本の世界でのプレゼンスがどんどん下がっているような気がするんですが、
日本が下がっているのか、他の国が上がってきているのか、、、
日本人じゃないので日本の政治に対して自分が何かできる訳じゃないんだけど、いちおう生まれ育った国だし、夫も息子も日本人だし、もう少し日本がイケてる国になってくれるといいなぁと思うのでした。
あぁそっか、息子を総理大臣にすればいいのかな?www
(しないしない)
~~ はじめましての方はこちらもぜひ ~~
~~ 読書感想文シリーズ ~~
■ 戦争広告代理店(このエントリ)
■ 「選択の科学」
■ 「NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く」
■ 「ベトナム難民少女の十年」
■ 「人生の勝算」
■ 「知識ゼロから学ぶソフトウェアテスト」
■ 「採用基準」
■ 「マンガドラゴンクエストへの道」
■ 「社長失格 ~ぼくの会社がつぶれた理由~」
■ 「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」
■ 「添削! 日本人英語 ―世界で通用する英文スタイルへ」
■ 「出ない順 試験に出ない英単語」
■ 「洗練された会話のための英語表現集」
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